Photo: Cass Bird Stylist: Samira Nasr
セレブと一般人を隔てる扉があるせいで、鍵穴から覗き見するほど好奇心旺盛な私たちには、有名人に対する中途半端な印象しか残らない。たとえば、昨年全米公開されたミステリー映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』でブレイクしたアナ・デ・アルマスの鍵穴を覗いてみると、有名なキューバ料理レストランのダイニングルームを、まるで数秒でも時間を節約しようとするかのように、脱兎のごとく横切る彼女の姿が見える。
取材が行われたのはゴールデン・グローブ賞授賞式の前日で、彼女はフェイシャルエステを終えたばかりだ。エステティシャンはさながら、すでにピカピカの銀食器を磨く執事のようだ。これ以上どこを磨き上げるというのだろう。私には見当もつかない。
アナは『ナイブズ・アウト~』のマルタ・カブレラ役で主演女優賞にノミネートされていた。受賞は逃しても、濃紺のスパンコールが施されたラルフ&ルッソのドレスでレッドカーペットを歩く彼女の姿は勝者なのだ。ダイニングルームの明かりが徐々に消える中、アナは「まるでキューバみたい」と笑顔で言う。だが、アナを照らす明かりが薄暗くなる様子はまったくない。
「ありえない。そうでしょ? 一人の人間の全人格をとらえるとか、その人物の背景をまったく考慮せずに人生を理解することなんて、不可能よ。私が存在している今この瞬間だってわからないのに。私にはこの先ずっと理解することなんてできないと思うし、できるようになった頃にはもう変わってしまっている」
今年のゴールデン・グローブ賞にて。Photo: Steve Granitz/WireImage
名声の扉の向こう側に立ったばかりのアナだが、彼女はしっかりと現実の世界に立っている。この取材は、彼女がその扉をサッと開けてスポットライトを浴びること、人生がお決まりのイメージにたとえられること、このロサンゼルスに嫌気がさしていること(読者がこれを読む頃にはもう去っているはずだが)──そういったことすべてが彼女にとってどういうことなのかを率直に語るめったにない機会なのだ。
ほんの数年前、アナは一日7時間、語学学校で英会話を学び、4カ月でマスターした。今や次々と複数の仕事をこなすハリウッド有数の女優の一人になっている。
フィービー・ウォーラー=ブリッジが脚本を(ほぼ)担当した007シリーズ第25作目となる『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(11月20日日本公開)では、監督のキャリー・ジョージ・フクナガがアナのために生み出したパロマ役で出演。エイドリアン・ライン監督によるベン・アフレックとの官能スリラー『ディープ・ウォーター(原題)』(20年公開予定)に出演するほか、ヘレン・ハントとの共演『ナイト・クラーク』(20)、Netflixの政治ドラマ「 セルジオ」(20)、そして『ブロンド(原題)』(20年公開予定)ではマリリン・モンローを演じている。
初期の作品でライアン・ゴズリング(『ブレードランナー 2049』(17))やキアヌ・リーブス(『エクスポーズ 暗闇の迷宮』(16)と『ノック・ノック』(15)の2作品)と共演しているのだが、オンラインの映画情報サイトに掲載されている彼女の作品履歴ページ上では、そういった作品がすでにずっと下のほうに記載されている事実には、かなりの驚きだ。彼女はどうやってここまでたどり着いたのだろう。
それは(ある程度まで)豆料理のおかげだ。「この料理を食べられるのがもううれしくて」とバターをたっぷり塗ったパンを引きちぎりながら彼女は言う。「2週間過ごしたキューバから戻ってきたばかりなのにね。ほんと、自分でもクレイジーだと思う。でも私の燃料なの」
リドリー・スコット製作総指揮のSF映画『ブレードランナー 2049』(17)では、ライアン・ゴズリング演じる主人公の恋人役に抜擢。彼女の名が世界中に知られるきっかけとなった。Photo: Warner Bros./Courtesy Everett Collection/amanaimages
アナはハバナに家を所有している。そこにはいまでも友人や家族の大半が住んでいる。彼女と同席して2分もすれば、ハバナののんびりとした夢のようなイメージが浮かんでくる。今年の年明けは「ハバナの旧市街にある建物の屋上パーティーで、音楽を流し、みんなで踊って、お酒を飲んで」過ごしたという。しかし、物事は見た目以上に複雑だ。そのパーティーは、アナが長い間憧れていた俳優たちでいっぱいだった。そんなスゴイ人たちが「私のことを誇りに思っているとか、キューバ出身の俳優のお手本だとか言ってくれて」。そう語る彼女は目に涙を浮かべている。
両親は彼女が出演した映画のプレミアに出席したことが一度もない。両親が作品を観るのは「ずっと後になってから」なのだ。皮肉というべきか、彼女のロサンゼルスの知り合いの中には、キューバの“デジタルデトックス”が羨ましいとか、「朝食に何が出てくるかわからない」のが楽しいとまで言う人もいるという。オバマ政権下、短期間だったがキューバとの国交が開かれた際、キューバがスターバックスに侵略されるだろうという懸念も耳にしたことがあるそうだ。「アメリカ人って、あればあったで文句を言うし、なければないでまた文句を言うのよ」
演技は一番好きだけどその話ばかりは無理なの。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』のヨーロッパプレミアでは、アレクサンドル・ボーティエのタキシードに身を包んだ。Photo: Mike Marsland/WireImage
「今着ている服は?」という質問にアナはどう答えるのだろう。この手の質問はセレブにとって大学進学適性試験で自分の名前を正しく書くのと同じことのはずだ。「衣類は何も持ってない」「えっ?」「ハバナから直接ここに来たから、移動用の服を着ているの。スーツケースは衣類とか薬とか必需品とか──必要なものすべて──でいっぱいだけれど、手ぶらで戻ってきた。クールに見えるように、スタイリストがこのサンローランのスーツをくれたの。実生活では着ないわ」
念のために言っておくが、もちろん彼女には服がある。ただ、『ディープ・ウォーター』を撮影しているニューオーリンズにあるというだけだ。ちなみに、ハリウッド業界は「私の人生じゃなくて、目の前の現実」だそうだ。「私には素晴らしい友人たちがいて、ここでは信じられないようなことが起こっているけど、ライフスタイルが人目にさらされることや、この絶え間のないビジネス状況は私には合っていない。私は人生や芸術、赤ちゃんやペットについて話すのが好き。演技するのは一番好きなことだけど、いつもその話ばかりするのは無理」。マリリン・モンローのことばを引用すれば「キャビアがあるのはステキだけど、毎回食事に出てきたら嫌でしょ」。豆料理ならありかも。キャビアではない。
アメリカ映画に出演する自分の姿は想像できなかった。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』で共演したジェイミー・リー・カーティス、クリス・エヴァンズ、そして主演のダニエル・クレイグとともに。Photo: Chelsea Guglielmino/Getty Images
ということで、今のところ彼女は自身が育った海辺の町から30分ほどのハバナに戻っている。子どもの頃は、街に出かけることはなかった。「交通手段がないと街に出るのは本当に大変だった」からだ。その代わり、友達と演技したり、踊ったり、歌ったりして、自分たちで楽しんでいたし、近所の人たちも楽しませていた(彼女はスパイスガールズをカバーするアマチュアバンド、ベイビースパイスだったが、数年前にラジオで聴くまで「ワナビー」の歌詞を理解できていなかった)。後に両親は彼女を演劇学校に入学させた。「毎朝ヒッチハイクしたわ。車が必ず止まる信号機の横に立って、窓に近づくと行き先を告げたの」
だが、彼女の瞳のかすかな輝きはアメリカ映画ではなかった。アメリカ映画に出演する自分の姿が想像できなかったというのが主な理由だ。「豪邸、飛行機、大金、銀行強奪、明らかにどれもリアルじゃない。プリンセスがリアルじゃないのと同じようにね。絵空事。私が注目していたのはキューバ人の俳優たちだった。ボートに乗り込もうとしている人たち、互いに怒鳴りあってる人たち──それが私の現実だったから」
アナは法的に可能な年齢となる18歳でスペイン・マドリードに移住する。母方の祖父母がスペイン人だったからできたことだ。マドリードでは物事がトントン拍子に進んだ。2年前に撮った映画を通じてエージェントに所属、「で、運よく1週間後にキャスティングディレクターから電話があったの」。アナはスペインのテレビドラマ「El Internado(寄宿学校)」(07~10)に主演。「『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(16~)みたいな感じのドラマで大ヒットした」という。クリエイティブな面でも(彼女は「退屈」だと感じていた)、実質的な面でも(その頃はまだ10代の若者を演じていた)成長したと感じることができるようになった後、彼女はアメリカにやってきた。
ハリウッドでいかに順調であるかを考えると、ハリウッドが最終目的地ではなかったと想像することすら難しい。しかし、アナが気づかせてくれたのは、重要なのは背景だということ。彼女のそれは「マイアミでさえ見かけることが少ないキューバ人だったということ。そして話題は決まってスペインの話だったこと。今までどうやって選択してきたかってよく訊かれるけど、つまり、私にはいつだって一度に一つの選択肢しかなかったの。自分の人生に二択──自分が望むやり方か代替案かという二択──はなかった。自分が望む道しかなかった」
事件の鍵を握る看護師役を演じた『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)では、その迫真の演技が評価され、ゴールデングローブ主演女優賞にもノミネートされた。Photo: Claire Folger/Lionsgate/Courtesy Everett Collection/amanaimages
アナの手が届かないところはそれほど多くないという印象を受ける。『ナイブズ・アウト~』で共演したジェイミー・リー・カーティスは、アナと顔を合わせたとき彼女が誰なのか知らなかった。「まだ何者でもない、いろいろな可能性を秘めた娘だと思ったわ。大学生に話しかけるような感じで、どんな目標を持っているのか尋ねてみたの。で、スティーブン・スピルバーグに即メールよ。キャスティング部門は本気でこの女性の起用を検討すべきだって」。1年後、ジェイミーはアナをこう評価している。「アナはスゴイ。いろんな層にアピールできる稀有な存在で、世界中にセンセーションを巻き起こす女優の一人、ソフィア・ローレンのようになると思う。彼女には申し分ない奥深さがあるし、とても穏やかで、すごくきれい。そして、キューバ出身だから粘り強さ、忍耐力、激しさもある」
このような深みのある性格描写は、当初『ナイブズ・アウト~』の役柄の描写にはなかった。ざっくり言うとマルタは「きれいなラテン系の女性看護師」で、アナはもう少しで役を引き受けないところだったのだ。ラテン系の女優はいまだに「官能的」だの「魅力的」だの、そんな言葉を使って固定観念を持たれることが多いと指摘する。「でなければ、『気性が激しいセクシーな女』とか。それが私たち。それだけじゃないってことなら別に何の問題もない。私が受け入れられないのはそこなの」
仕事での固定観念的な見方を避けているアナだが、舞台裏、とりわけ「#MeToo」運動以前のハリウッドでそれが役に立ってきたと思っている。「セクハラやジェンダー境界線のことに関して、はっきりと意見を述べるにはどうすればいいか」を教えてくれたのは両親だとし、自身を「頭の回転が速くて有能で気にしない」人間だと表現する。そして、「親切でまっとうな人たち」と仕事をしてきた自分は幸運な人間だと考える一方で、「キューバ人的なことが役に立つ」 と認めている。「 どうして?」と私が尋ねると、まるでいたずらをたくらむ犬をじっと見て「ダメよ」とでも言うように、彼女は目を細めると指を左右に振り、「チッチッ」と舌打ちした。
ロサンゼルスに移ったアナは、オーディションに行かせてくれるようエージェントに要求し、自分は英語の学位を取得するためにハリウッドに来たわけではないと伝えたという。アナにまつわるエピソードにはこんなものがある。アナは台詞を発音で覚えていたのだ。『ウォー・ドッグス』(16)の撮影中、トッド・フィリップス監督が「台詞を変えちゃって、もう最悪。結局、監督は『わかった、もういいよ。台本どおりでいこう』って。今思うと、俳優としてそこにいるには不向きな場所だった。私には会話が続けられなかったから」
「初めての読み合わせで『アイ・ベッグ・ユア・パードン(失礼しました)』って何のことだかさっぱりわからなかったの」と当時を思い出して笑う。「すごく怒っている台詞だと思ったの。『何ですって!』みたいな感じで。その場にいた人たちみんな『彼女、自分が何を言っているか全然わかってないね』って感じだった。でもね、そのシーンで何が起きているのかは、ちゃんと把握していたつもりだったの。だから『全然わかってない』と『ちゃんとやってる』が混じり合った変な感じだった」
マリリン役は喉から手が出るほど欲しかった役。
Photo: Cass Bird Stylist: Samira Nasr
新人からベテランまで、すべての俳優と同じように、アナは仕事や共演者について社交辞令的なことしか言わないが、マリリン・モンローの伝記映画『ブロンド』(作家ジョイス・キャロル・オーツの小説をアンドリュー・ドミニク監督で映画化)について話すときの彼女の顔は俄然輝きを増している。
「マリリン役のオーディションをやったのは一度だけ。監督は『君で決まり』と言ったけれど、プロデューサーとか、資金面の人たちとか、監督以外にもオーディションしないといけなくて。説得しなきゃならない人たちが私には常にいるの。でも、自分にはやれるってわかってたわ。マリリンを演じることは画期的なことだった。だってマリリン・モンローをキューバ人が演じるのよ。マリリン役は喉から手が出るほど欲しかった役なの」。脚本が届く前、マリリンについてアナが知っていることといえば、いくつかの象徴的な役と写真に限られていたが、今では面白いトリビアを次から次へと紹介できるほどになっている。アナの愛犬エルヴィスもマリリンの愛犬役で映画に出ているのだ。「名前はマフィア。もちろん、シナトラからの贈り物よ」
アナはより深い意味でマリリンと自分を重ね合わせている。「有名な写真の中の彼女は笑っているけれど、でもそれって、当時彼女が実際に経験していたことのほんの一部にすぎないのよね。監督との仕事上の関わりということで言えば、アンドリューほど緊密に仕事をした監督はいままでいなかった。確かに、コラボ的な関係はこれまでにもあったわ。何かアイデアを思いついて眠れなくなった監督から夜中に電話がかかってくる。すると突然自分も同じ理由で眠れなくなる‥‥‥」
「アナが『ブロンド』のスクリーンテストのビデオを観せてくれたんだけど」とジェイミー。「呆然としたわ。信じられなかった。アナは完全に消えて、彼女がマリリンだった」。一方、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の監督、キャリー・ジョージ・フクナガは長年アナのファンで、「パロマ役はアナのために書き上げた。役にユーモアの要素、まだ彼女が演じたことがない要素、を追加してみたよ。おもしろそうだと思ったからね」と話す。彼もまたアナの魅力を「自信、ユーモア、やればできるという気持ち」と表現している。が、結局のところ「注目したくなる不思議な魅力の持ち主かどうか。アナにはその魅力があるんだよ」
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のレア・セドゥ、キャリー・フクナガ監督、アナ、ダニエル・クレイグ、ナオミ・ハリス、ラシャーナ・リンチ。Photo: Roy Rochlin/Getty Images
はまり役として007の世界へ招かれたにもかかわらず、アナはボンド映画だから出演しているのではないことを確かめたかった。「飛び跳ねるくらいとても興奮していたのは事実よ。でも、この映画に出ることで、今までの努力が台無しにはならない、すべてぶち壊すことはない、それを確認する必要があった。それに、ボンドガールって、少なくとも私にとっては縁がないものだったから」
こういった懸念はもっともなものだった。イギリスのオンライン新聞『インデペンデント』は「『ノー・タイム・トゥ・ダイ』以上に問題をはらんだプロダクションがいままでにあっただろうか?」と記している。この作品は「#TimesUp」の時代に作られた最初のボンド映画だ。
とはいえ、007シリーズが性差別に対処しようと試みたのはこれが初めてではない。代々、この取り組みは「ボンドガール」に無意味に高尚な学位や、たった一つの駄洒落のために存在する役名を与えるという形で行われてきた。「ボンドガール」は「きれいなラテン系の女性看護師」と同じくらい単純化された存在になり得るのだ。「ボンドガール、なんて僕は呼ばないよ」とボンド役のダニエル・クレイグは言う。「他の人を否定するつもりはないんだ。ただ、『ボンドガール』について話をするとしたら、その人とは良識ある会話ができないというだけ」
ダニエルは『ブレードランナー2049』でのアナの演技に最初に衝撃を受けていたため、『ナイブズ・アウト~』や『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でアナが共演者としてキャストされたことへの反応は熱狂的だった。「彼女のような女性と仕事ができるなんて僕は"持ってる"ね。撮影中、いろんなゴタゴタがあった。それでも彼女は輝いている。なぜなら、彼女は本物だからだ。それほど重要な役どころではないけれど、それでも彼女は現場にやってきて完璧に演じる。脚本が書き直されて、内容が絶えず変更される。それでも彼女は動じなかった」
「フィービー(・ウォーラー=ブリッジ)も現場にいてくれたしね」とアナ。「彼女特有のユーモアと、とんがった感があったから、私が演じた役はリアルな女性だと思えたの。でもね、実際にリアルな私たちは進化して成長して現実を取り入れることができるでしょ。でもボンドはファンタジーなの。結局、彼らが住んでいる世界の外に何かを持ち出すことはできないのよ」
「他に選択肢はなかった」と、ボンド映画のプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリは言う。「私たち全員が望んでいたのがアナだった。アナが演じる役はCIAで働き始めたばかりの最低限の訓練しか受けていない新人で、彼女は最も熟練したエージェントにはならないだろうって予想されるの。でも、彼女にはすごいパンチ力がある、とだけ言っておく」
やりがいがあって、実力を発揮できる仕事をするだけ。
現在、アナは『ディープ・ウォーター(原題)』で共演したベン・アフレックと交際中。Photo: BG004/Bauer-Griffin/GC Images
この上なく爽やかなアナだが、ハリウッドのベイブ(かわい子ちゃん)だと思うのは間違いだ。この決めつけのせいで彼女自身、時に経験豊富な映画スターというアクセルを踏むこともあるし、時に「自分が場違いだと感じる」弱さというブレーキを踏むこともある。全体像としてのアナは彼女が演じた『ナイブズ・アウト~』の最後のシーンで描かれた役に近い。無理やり引き込まれたゲームに勝ってしまう心優しい女性だ。
頭上の明かりが再び暗くなり、ウエイターが隣のテーブルで「ハッピーバースデートゥユー」をスペイン語で歌うと、アナは「ああ、やっぱりキューバみたいじゃないわ。残念」と言った。彼女にとってこの取材は、飲み物を頼もうと彼女が提案してダイキリを注文するのと同じ意味合いがある。なぜなら、モヒート(キューバのハバナが発祥の地)を注文するのは「お決まりのヘミングウェイ的な? もう、見え見えだわ」
ロサンゼルスに着いたばかりのとき、彼女はエージェントと一緒にプロデューサーのコリーン・キャンプに会った。コリーンはバーバラにアナを紹介。そこから『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に繋がっていった。アナの成功──等分の芸術的才能と必然性──は、彼女のような立場にある人間のほんの少数が、まっとうに手に入れた意志の強さによって達成されたのは事実だ。「『どうやってそんなに早く英会話をマスターしたの?』って訊かれる。『だって自分の人生がかかっていたから』って、そんな感じ」
ロサンゼルスに移った頃、アナはエージェントのフランクリン・ラットと交際していた。彼女が有名になると、パパラッチや交際相手のゴシップ──知名度の基本──を経験するようになる。おそらく名声の扉の向こう側に限りなく近いということは、そういった現実が潜在的なマイナス要因になり得るのだろう。名前には触れないが、私生活について彼女は手短に話した。「付き合っていた人はいるけれど、ふさわしくない人だったら、独りでいるほうがいい。私がやりたいのは仕事だけ。やりがいがあって、自分の実力を発揮できる仕事がしたい」
アナも私も豆料理を堪能した。それにラムも。窓の外では空がオレンジ色に変わっている。ロサンゼルス近郊の街中にあるレストランから見上げるよりも、ハバナの家の屋上から見るほうがふさわしい景色かもしれない。頭上の明かりが暗くなる。「ハッピーバースデートゥユー」を聞くのはこれで4度目だ。二人とも「もう十分」と目だけで会話する。明日の夜の授賞式で何が起ころうと、変わり続けていくこの一瞬一瞬の素晴らしい夜の一つとして記憶に刻まれることをアナはわかっている。「人生は生きるためにあるのよ」
Profile
アナ・デ・アルマス
1988年、キューバ・ハバナ生まれ。14歳からハバナの国立演劇学校に通い、16歳のとき『カリブの白い薔薇』(06)で映画デビュー。その後、スペインに移りテレビドラマなどで活躍し、14年にロサンゼルスに移住する。『ブレードランナー 2049』(17)で主人公の恋人役を演じ、一躍有名に。『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』ではボンドガール役に、『ブロンド(原題)』(ともに20年公開予定)ではマリリン・モンロー役に抜擢され、今、最も旬の女優として注目を集める。
Text: Sloane Crosley
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June 23, 2020 at 06:00PM
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アナ・デ・アルマス──ハリウッドのスターダムに駆け上がる、キューバの新星。 - VOGUE JAPAN
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