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「おジャ魔女どれみ」をタイトルに使わない理由 『魔女見習いをさがして』制作陣の覚悟 - シネマトゥデイ

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映画『魔女見習いをさがして』より
映画『魔女見習いをさがして』より - (C) 東映・東映アニメーション

 映画『魔女見習いをさがして』は、魔女っ子アニメの不朽の名作「おジャ魔女どれみ」シリーズの、テレビ放送開始20周年の記念作。ところが、主役はシリーズを通して活躍したおジャ魔女たちではなく、タイトルにも「どれみ」の名前は入っていない。あえてそうしたのには、シリーズを一から作り上げてきた立役者でもある佐藤順一監督と関弘美プロデューサーの、シリーズ人気に安住しない覚悟と気迫があった。

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実績は全部捨ててもいいという覚悟で挑戦

映画『魔女見習いをさがして』
佐藤順一監督と関弘美プロデューサー

 「おジャ魔女どれみ」が好きという共通点でつながったソラ、ミレ、レイカという3人のヒロインが、大人になって見失ってしまった大切なものを探していく物語『魔女見習いをさがして』。本作のタイトルについて「少なくとも『おジャ魔女どれみ』は最初から使わないつもりだった」と関プロデューサーは明かす。そのうえで『魔女見習いをさがして』というタイトルは、仮題の段階から決まっていたのだとか。「おジャ魔女どれみ」という名前は使わず、どれみたちを主人公にもしないけれど、観終わったお客さんには「これこそ『どれみ』の映画だ」と思ってもらえるようにしたかったそう。

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 「普通当たったタイトルをむやみやたらに捨てない。王道ではないことは、重々承知しています。それでも『おジャ魔女どれみ』というシリーズ名を入れない方向で考えたのは、これまでの人気に安住したくなかったからです。いったん売れたからといって、タイトルだけ引き継いで内容はいくらでも替えの利く作品を作り続けているようでは、オリジナルアニメとしては失格だと考えています。シリーズ人気にあぐらをかかない勇気を、一緒に仕事をしている他の若いプロデューサーにも持ってほしい。そんな想いも反映されています。実績は全部捨ててでも新しいチャレンジを試みる、それくらいの覚悟は持つべきなんじゃないでしょうか」

 そう語る関プロデューサーの笑顔から感じられるのは、ベテランになってもなお衰えることを知らない、数々の人気作を生み出してきた名プロデューサーらしいチャレンジ精神だ。

 「一度売れたタイトルがあると、みんな安心しちゃうでしょう?」

 みんなというのは、他の人気シリーズを担う後進のプロデューサーのこと。作品人気を落とさないよう、守りに入ることだけを考える若手を、「何を怖がっているのか」とまで、関プロデューサーは叱咤する。これまでの実績はすべて捨て去るくらいの、覚悟と気迫が必要だというのだ。

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 この覚悟と気迫は、佐藤順一監督率いる制作現場にも伝わり、より良い作品を目指してチャレンジしようという空気感を生み出していったそう。「プロデューサーが二の足を踏んでいると、スタッフもどこまでやっていいのかわからなくなるし、勢いだって違いますからね」と語る佐藤監督。もちろん、覚悟と気迫とチャレンジ精神が独りよがりになって空回りすることなく、「どれみ」の新しい映画としてシリーズファンが納得し、感動できる作品に本作は仕上がっている。

なぜ主人公はどれみファンの女性たち?

映画『魔女見習いをさがして』
映画『魔女見習いをさがして』の3人のヒロイン - (C) 東映・東映アニメーション

 主人公を「おジャ魔女どれみ」のどれみたちではなく、20代の女性3人にしたことについては、「スタッフもみんな驚いていたよね」と佐藤監督と関プロデューサーはうなずき合う。新しい主人公・ソラ、ミレ、レイカの3人は、作品のターゲットとして見据えるのと同じ、現代社会を生きる20代の等身大の女性。教師を目指しているソラが発達障害のある児童との向き合い方に悩んでいたり、キャリアウーマンのミレが仕事上の壁に直面したり、フリーターをしながら夢を追うレイカに大きな葛藤があったり、共感を呼ぶ設定と描き方は、佐藤監督の表現力と関プロデューサーのマーケティングあってのもの。特に後者は、手元に資料がなくとも、現代女性の結婚時の平均年齢や大学進学時の奨学金の活用率まで即座に言えるほど精緻を極めたもの。「おジャ魔女どれみ」シリーズ最大の魅力である「悩みや苦しみにも真摯に向き合い、深い感情まで描き切ること」の源にもなっている。

 「おジャ魔女どれみ」シリーズに長年親しんできた人とそうでない人、どちらにとっても新鮮な感動が味わえる映画『魔女見習いをさがして』は、11月13日より公開される。(取材・文:香椎葉平、写真:編集部・小山美咲)

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