蒼が演じるのは、サメ研究チームの頭脳として活躍する日本人科学者ミヤ・サトウ。出演シーンも多く、ラストまで重要な役割を果たす。
蒼といえば、女優活動をしつつも、姉・あんなと共にバラエティーなどで活躍する姿が印象に残っており、ハリウッドデビューと報道が出た際、驚いた人も多いのではないだろうか。「中華圏の文化が好きで、数年前から台湾でも活動していました。中国語を使ってお芝居をしているなか、もっと幅広く英語を使った演技もしたいと思い、ハリウッド作品のオーディションにも積極的に受けようとしていました。そんなとき、この作品のオーディションの話を聞きチャレンジしたんです」。
日本人のキャスティングチームのセレクションを経て、ビデオを通じてアメリカのキャスティングプロデューサーや監督との数度に渡るオーディションを重ね、ハリウッドデビューがかなった。
南アフリカで行われた撮影は、これまで蒼が経験してきた現場とはなにもかも違ったという。「国が違えばシステムややり方はまったく違うという印象。まずキャストがインターナショナルなので、文化がまるで違いました。そんななか、自分の意見をしっかりと相手に伝えないとなにもできないというのは、一番痛感したことでした」。
蒼は「海外でお仕事をしたいという思いは昔からあったのですが、生まれも育ちも日本なので、どちらかというと日本人気質なんです」と笑うと「もちろん自己主張は大切なので、しっかりと意識しつつ、日本人としてのつつましやかなアイデンティティーみたいな部分も個性として活かしていきたい」とハイブリッドを目指すという。
本作のオーディションは日本で行ったが「高校生のときにスカウトされてこの世界に入ってから、漠然とですが世界に出てやっていきたいと思っていました」と海外志向は強い。実際、数年前から台湾での活動を行うなかで、視野はどんどんと広がっていった。
「いまコロナ禍にあるのでなかなか海外に行くことは難しいですが、落ち着いたら機会をみて、アメリカにも滞在してしっかりと土台作りをしていきたい」と未来に思いをはせる。英語についても、劇中では、ネイティブの俳優たちと遜色ないと感じたが「英語はできて当たり前で、ダメならスタートラインにすら立てない。しかもただ話せるだけではなく、セリフの上にお芝居が入ってくるので、自分が予期してなかった場所で躓くこともありました。まだまだ力不足に感じることも多かった」と自身は辛口だ。
蒼が演じたミヤは、研究チームのなかでバランサーとしての役割を果たしつつも、小さくキレて、日本語で暴言を吐くこともあるチャーミングなキャラクターだ。「ミヤちゃんは海外に住んでいる日本人ということもあり、いわゆるステレオタイプの日本人ではなく、思ったことを口に出す女の子。でも日本人らしい部分もにじみ出るように監督と話し合いながら役作りをしました。小さな淡い恋心も映画のなかで描かれています」と見どころを語る。
ハリウッドデビューを果たし、漠然と持っていた「世界」が一つ形になった。「みんなすごく能動的でアグレッシブ。おとなしくしていると『君いたの?』という風になってしまう」と海外の俳優たちの行動には大きな刺激を受けたという蒼。「国籍関係なく世界中の俳優さんと肩を並べたいという思いもありますが、日本人の文化をより多くの人に知ってもらいたいという気持ちもあるので、日本人のアイデンティティーをしっかり持った俳優になっていきたいです」と抱負を語ってくれた。(取材・文:磯部正和)
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