新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、徐々にハリウッドの映画界が活動を再開している。
世界で1位の感染者数を抱える米国。 なかでもハリウッドのあるロサンゼルス周辺が深刻で、カリフォルニア州の総感染者数は全米1位の62万人、死者数は1万1000人を超えている。州は3月に大胆な行動制限をした後、6月になって、ようやく厳しい制限つきで映画撮影の許可を出した。
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これにより少しずつ業界は始動したが、ソーシャルディスタンスを保つことやマスク着用のルールから、従来どおりの撮影はほぼ不可能な状態となっている。
ハリウッド映画は大人数で取り組むのが常だが、現在は人数や撮影時間に大きな制限がある。ヘアメイク担当者が役者につくことは難しく、俳優は自分でメイクして収録。音声担当者がマイクを持って録音するのも距離を置かなくてはならない。 スタジオに観客は入れられず、大人数のエキストラも使えない。人と接近したシーンを拒む俳優も出て、ラブシーンなどの撮影も難しくなった。
新型コロナによる感染や訴訟のリスクをカバーしてくれる保険会社はないそうだ。保険がなくてはローンを組むことも難しく、多くの資金調達が難航している。結果、照明代のかかる夜間の撮影を減らしたり、夫婦の俳優をキャスティングするなどの工夫がなされている。
そんな環境のなか、いくつかの映画が海外に飛び出して撮影を再開した。
一番人気なのは、感染者数の少ないニュージーランドで、すでに『アバター2』など7つの映画や番組制作が決まっている。ハリウッドは、すでにニュージーランドに3000の仕事を産み出し、280億円近い利益をもたらすという。
ニュージーランドは102日ぶりに感染者が発生し、3日間のロックダウンを実施した。今後、感染者数が増加すれば、撮影に影響が出る可能性は否めない。それでも今後のニュージーランドでは映画産業への投資が進む見込みだ。
他の映画と違う大胆な行動に出たのが、『ジュラシック・ワールド/ドミニオン』だ。ユニバーサル映画は、英ロンドン郊外にあるホテルをおよそ750名のスタッフで20週間貸し切り、厳しいルールの下で7月6日から撮影を再開している。
ホテルには150カ所の消毒ステーションや体温測定所があり、現場には医療従事者たちが常勤している。食事はプラスチックの壁の反対側から真空状態で配られ、配膳の仕方も徹底されている。ホテルには1万8000の検査薬が準備された。
宿泊スタッフは2週間の隔離後、ホテル内を自由に動き回れる。ソーシャルディスタンスは不要でマスクもしなくていい。現場は2カ所にゾーン分けされ、「グリーン・ゾーン」と呼ばれる小さなエリアには出演者やディレクターと一部のスタッフしか入れない。グリーン・ゾーンではホテル従業員を含めて週に3回の検査をするという。
映画のセットは使用する前に消毒薬が噴霧されるが、こうした手順は医師たちが監修したもので、撮影に専念できる環境を作るために考案された。ユニバーサル映画はこうしたコロナ対策におよそ9億6000万円を投じている。イギリスの他に、マルタでもロケをする予定だ。
ハリウッドとしては、コロナ禍における初めての大がかりなロケで、この方式が成功したら今後の業界の手本となるだろう。映画は来年6月に公開される予定だ。(取材・文/白戸京子)
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August 17, 2020 at 09:00AM
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