イレギュラー・コーポレーションは、2020年3月5日にNintendo Switch用ソフト『パズル探偵スカウト 失われたデータの陰謀』の配信を開始した。
※Steam版は2020年3月6日より配信予定
本作は、『Fall Guys』や『はーとふる彼氏』の海外版『Hatoful Boyfriend』を手掛けたイギリスの開発会社・メディアトニックが開発した推理アドベンチャー。
しかし、ゲーム内音楽を『逆転裁判』の音楽の作曲家として知られる杉森雅和氏が担当しているほか、キャラクターデザインを前述の『はーとふる彼氏』の作者である玻都もあ氏が担当するなど、日英合作タイトルとなっている。本稿では、全4章構成の物語のうち、第1章までをプレイ範囲としたプレイレビューをお届けする。
1990年代のアメリカのショービジネスの世界が舞台
物語の舞台は、1990年代のアメリカ・ロサンゼルス。主人公である女優のホナー・ミズラヒは、人気探偵番組『殺人ミス・テリー』に出演していたものの、ある日突然、番組を降板になってしまう。失意に陥いるホナーだが、今度は、ホナーを降板させた番組プロデューサーのブレイクが何者かによって殺害がされる事件が発生。
ブレイクに恨みを持つ者の犯行として、事件の嫌疑をかけられてしまったホナーは、その疑いを晴らすため、高度な知能を持つ、記憶喪失のロボット“スカウト”とコンビを組むことに。ホナーにかけられた容疑を晴らし、スカウトの失われた過去を取り戻すため、ショービジネスの世界で起きる一連の殺人事件の真相を解き明かしていくことになる。
1990年代のアメリカのショービジネスの世界が舞台という、独特な世界観を持つ本作。登場人物たちも、主人公のホナー・ミズラヒを始めとする個性的なキャラクターたちが脇を固めている。ミステリーといえば、探偵役と助手との掛け合いも見どころのひとつといえるが、明快な性格で決断力のある主人公のホナーと、誰に対してもフレンドリーで礼儀の正しいロボットであるスカウトのコンビは息がピッタリで、ジョークを交えながらもどんどん事件を解決へと導いていくふたりの姿はプレイしていて気持ちがよく、またゲームにほどよいテンポ感も与えていた。
そのほか、メイクアップアーティストであり、ホナーの親友でもある女性口調の男性K.C.ルボーや、『殺人ミス・テリー』のスターで、高飛車な女優ベッキー・コール、堅物な刑事のゲリー・クロスなど、ひとクセもふたクセもあるキャラクターが一連の殺人事件へと関わってくる。そんな彼らが物語を通じてどのような人間模様を映し出していくのか、ぜひ注目してプレイしてみてほしい。
パズル要素が加わった、本作ならではのアドベンチャーパートの魅力
ゲームは基本的に、事件の関係者たちに話を聞きながら証言を集めていくノベルパートと、事件現場を捜査して証拠を探すアドベンチャーパートをくり返しながら、犯人の正体を突き止めていく……という流れで進行する。
ノベルパートでは、プレイヤーが選んだ選択肢によって、事件に繋がる新たな証言が生まれるという、推理アドベンチャーとしては王道な作りになっているのに対して、アドベンチャーパートでは、“ビットマップパズル”という、本作ならではのゲームシステムを駆使して事件現場を捜索するのが本作の大きな醍醐味となっている。
ビットマップパズルとは、画面の上と左にある数字を手がかりに、ゲームフィールド上のマスを塗りつぶすというもの。
アドベンチャーパートでは、まずプレイヤーはスカウトを操作し、事件に繋がる証拠品が落ちていそうな場所をスキャンして特定する。そうすると、ゲーム内でビットマップパズルが展開され、パズルを解くことで、証拠品が入手できる。こうして入手した証拠品と、ノベルパートで手に入れた証言をもとに、事件の真相へと迫っていく。
アドペンチャーパートを通じて、事件現場を捜査し、怪しい場所を調べて証拠品を入手し、事件の全貌をあらわにしていくという過程では、実際に自分がホナーになりきって、探偵になったような没入感が味わえた。パズルの難度もそこまで高くなく、ゲームのテンポを損なわない程度となっていたので、パズルが苦手な人でも安心してプレイできると思う。
ちなみに、パズルの難易度はイージーかノーマルかを選択できる。一度設定しても途中で変更できるので、途中でパズルが難しいと感じたら、難易度を下げてみるといいだろう。
以上、第1章をプレイしてのプレイレビューをお届けした。王道なアドベンチャーゲームの要素がありつつ、本作ならではのパズル要素がエッセンスとなり、新しい遊び心地を体験できるゲームになっていると感じた。
イギリスの開発会社による作品だが、シナリオ内のテキストは丁寧に翻訳されており、とくに読みにくいと感じる部分はなく、ゲームの展開に合わせてスラスラと読み進めることができた。
作中に散りばめられたトリックの内容もしっかりと腑に落ちるもので、ミステリー作品としても十分におもしろい本作。推理アドベンチャーをあまりプレイしない方も、ぜひ気軽にプレイしてみてほしい。
最後に、本作のディレクター、エド・フィアー氏、キャラクターデザインの玻都もあ氏、音楽の杉森雅和氏からコメントをいただいたので掲載しよう!
ゲームディレクター/Ed Fear(エド・フィアー)氏コメント
『パズル探偵スカウト』は、私が大好きな要素をたくさん盛り込んだ作品です。
例えば、ハリウッドのセレブたち、1990年代のファッション、ドラァグクイーン、ユーモア、そしてミステリアスな殺人事件のサスペンスドラマなど、私が尊敬する日本のクリエイターのおふたりである玻都さんと杉森さんとの国境を越えたコラボレーションで、これらの要素を取り込んだ独特なテイストを持つおもしろいゲームに仕上がったと自負しています。
創作料理のような“和洋折衷”の世界観とゲーム性が、日本のプレイヤーの方々にどう受け止められるか、皆様のご感想をとても楽しみにしております!
キャラクターデザイン/玻都もあ氏コメント
1990年代ハリウッド! 華やかなテレビ業界で起こる殺人事件! 渦巻く陰謀! ワクワクせずにはいられない世界に関わることができて、とてもうれしく思います。
開発陣と話していると、1990年代のアメリカという設定に並々ならぬこだわりが感じられたので、最初に当時の文化やガジェットをあれこれ幅広くリサーチしたことをよく覚えています。
パソコンも、携帯電話も、オーディオ機器も、まだまだ無骨で灰色でかさばるフォルムをしていた時代。電化製品に限ったことではないのですが、過去の道具には言いようもないロマンがありますね。端的に言えば郷愁なのでしょうけれど、先人の工夫や歴史を感じられるからかもしれません(少々話が逸れますが、初代ゲームボーイのデザインは最高に完成された芸術だと、つねづね思っています)。
ファッションに関しても、彩度の高いパステルカラーに大振りでシンプルな図形を散らしたパターン、チェック柄のフランネル、やけにサイズの大きいデニム……と、当時の流行を調べているといろいろな発見があって、絵描きとして大いに得るものがありました。
日本のRPGを愛するエドさんとは大好きなタイトルがものすごく重なっていたり、いっしょにゲームオーケストラコンサートに行ったりと浅からぬ付き合いなので、イギリスと日本の距離を微塵も感じることなく、密接な制作体制で臨むことができました。そうそう、お互いドラァグクイーンが好きという共通項も外せません。ドラァグクイーンのキャラクターを描くことはイラストレーターとしての人生目標のひとつだったので、今回達成できて感無量です!
作曲/杉森雅和氏コメント
『パズル探偵スカウト』発売おめでとうございます!!
杉森にとって初となる国外タイトルでしたので、無事発売に漕ぎ着けることができてほっとするとともに、とてもうれしく感慨深いです。
思い返せば昨年2019年の春にオファーをいただいたときはSNSからのご連絡でしたね。いまだから言えますが、じつはメッセージを見た瞬間は「新手の詐欺か!?」と思いました(笑)。そこでメッセージをスルーしてしまっていたら、こんなに楽しい制作に関われていなかったわけですよ! 好奇心万歳!
さて、この『パズル探偵スカウト』はそんな杉森の好奇心をも凌駕する好奇心旺盛な女性(とかわいいロボット)がくり広げるミステリーアドベンチャー&パズルゲームです。
パズルが難しそう? 大丈夫、いままでビットマップパズルをプレイしたことがない僕でもクリアーできましたから! パズルの難易度のせいでシナリオを楽しめないということはきっとないでしょう。
ちなみに本作は、諸々の都合でボイスはないのですが、ぜひプレイヤーの皆様でアテレコしてみてくださいw 僕がかつて制作に関わった某アドベンチャーゲームでアテレコされていた方たちがいて、その作品愛にとっても感動したことがありますので、今回もちょっぴり楽しみにしております。
楽曲については“杉森らしく”というのがいちばんのオーダーでしたので、遠慮一切なしで杉森らしい楽曲のオンパレードとなっています。そういえば穏やかな曲を作ったのは何気に久しぶりかも……。
おかげさまで本当に楽しんで制作できました! とてもポップな絵と曲、そして少しピリッとした辛さを含むミステリアスなシナリオを皆様が楽しんでくださるととてもうれしいです。
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March 06, 2020 at 10:00AM
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『パズル探偵スカウト』ハリウッド女優と記憶を失ったロボットの痛快タッグによる推理アドベンチャーをレビュー - ファミ通.com
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