世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、ここハリウッドの映画産業にも影響が出始めています。4月に公開される人気スパイ映画「007」シリーズ最新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の北京プレミアと中国でのプロモーションが中止となったほか、イタリアでの感染拡大を受けてトム・クルーズ主演のアクション映画「ミッション:インポッシブル」最新作のベネチアでの撮影が延期されることも決まりました。
また、感染者数が急増しているイタリアでは、来月24日に開催を予定していたウディネ極東映画祭が6月に延期されることも発表されています。ハリウッドはこれから夏にかけて大作映画の公開を多数控えていますが、今後も日本を含む中国や韓国など感染が拡大するアジア諸国や欧州でのプロモーション活動にも影響が出ることは必至で、興行収入への影響は避けられないと見られています。
そんな中、古代中国の伝説を題材にしたディズニーの長編アニメ「ムーラン」(98年)を実写化した「ムーラン」の中国での公開が延期されることが決まり、昨年史上最高となる年間76億ドルの興行を記録したディズニーにとって大きな打撃となる可能性が伝えられています。
2億ドルを超える製作費を投じた本作にはドニー・イェンやジェット・リー、コン・リーらアジアのスターたちが集結しており、メインターゲットとして最大の市場になるはずだった中国での公開延期により、製作費の回収にも暗雲が立ち込めています。今やハリウッドにとって本国アメリカに次ぐ世界第2位の市場となっている中国では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて少なくとも4月末まで全土にある約7万館の映画館が閉鎖されることが決まっており、「ムーラン」以外にも「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」や日本のセガの人気コンピューターゲームをもモチーフにした「ソニック・ザ・ムービー」の公開延期も決まっています。近年、中国での興行収入に依存するハリウッド映画業界にとっては同国での公開延期は、大きな痛手になることは必至です。
今後は中国だけでなく日本でも「ノー・タイム・トゥ・ダイ」など期待される来日プロモーションが中止される可能性もありますが、本国アメリカでも感染が拡大すれば7月にサンディエゴで開催が予定されている全米最大のポップカルチャーの祭典コミコン・インターナショナルへの影響も懸念されます。また、近々では5月に南フランスでカンヌ国際映画祭の開催が予定されていますが、欧州での感染が広がっている中でこちらも中止や延期となる可能性も浮上しています。さらに事態が長引くと、9月にイタリアで行われるベネチア国際映画祭の開催も危ぶまれるなど、今後の状況次第では映画産業全体がさらなる打撃を受けることは間違いないでしょう。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)
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