※本記事には『STEINS;GATE』のネタバレになる情報が含まれる。直接的な表現は避けているが、注意されたし。
アドベンチャーゲームとして人気の高い『STEINS;GATE』がハリウッドで実写ドラマシリーズになると発表された。これはとても興味深い。『名探偵ピカチュウ』や『ソニック・ザ・ムービー』などゲームが実写作品になるケースはいろいろあるが、『STEINS;GATE』は実写企画にとても向いているからだ。
本作はノベルアドベンチャーゲームであり、文章をしっかりと読ませるため脚本が骨太である。そのストーリーで多くのプレイヤーを魅了したわけで、実写企画の題材として使うのはなかなか冴えている。しかし、『STEINS;GATE』を遊んだ人ならば気になるポイントも非常に多いはずだ。
この記事では『STEINS;GATE』が実写版になるうえで発生しうる問題を整理しよう。これらを乗り越えられれば、実写版が原作を超える名作になるのも不可能ではないはずだ。
1.時代が一昔前で、さらにオタクが秋葉原で活躍する物語で大丈夫なのか
原作の舞台は一昔前の秋葉原である。主人公である岡部倫太郎はもちろん、相棒のダルこと橋田至もオタクだ。メインヒロインの牧瀬紅莉栖も実はオタクだし、フェイリス・ニャンニャンに至ってはメイド喫茶の店員だ。
なぜこんな設定なのかといえば、(発売当時の)現実に近い印象をプレイヤーに持たせるためである。どの作品においてもリアリティは重要だが、本作は秋葉原を舞台にしたことでそれを確保している。ラジオ会館に突如謎の物体が現れるという導入も、ゲーム中に出てくる景色も、秋葉原を知る人ならばより本作が身近に感じられる。これにより、ターゲット層に深く刺さったわけだ。
また、登場人物が2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる、作中では@ちゃんねる)の当時のスラングを使うの大きな特徴となっている。2ちゃんねるのスラングは古臭すぎるのでさすがに消すだろうが、作品の特徴である秋葉原要素をどう活かすか、あるいはすべて消すのかは気になるところである。
秋葉原という要素は『STEINS;GATE』においては意外と重要だ。相棒のダルがスーパーハカーなのも秋葉原だから許されるし、岡部倫太郎が「鳳凰院凶真」と厨二ネームで名乗るヘンなやつなのも、当時のこの場所だから“それっぽい”のである。これをどう扱うのだろうか。
2.『STEINS;GATE』は結局のところギャルゲーである
『STEINS;GATE』はノベルアドベンチャーではあるが、同時にギャルゲーでもある。ギャルゲーの定義は複雑なのだが、ここでは必要以上に美少女キャラクターが出てくるゲームとでもいえばいいだろうか。ノベルアドベンチャーの系譜から見ても、本作はギャルゲーといっても間違いないだろう。
『STEINS;GATE』にはとにかく美少女がたくさん出てくる。胸がやたらと大きいキャラクターも多いし、恋愛絡みの話を想起させるいかにもギャルゲーらしい展開もしばしば。何より主要登場人物の多くは美少女である。そのほかにも、本編はシリアスなのにシャワーを覗くなんて不必要に思えるシーンも存在する。
また、『STEINS;GATE』にはキャラクターごとの個別エンドも用意されている。なぜかといえば、それがギャルゲーとしての妥当な形だからだ。しかし一本の大きなストーリーがあることを考えると、いかにもギャルゲー然とした個別エンドは必須かというと微妙なところである。原作ではその個別エンドを諦めることでトゥルーエンドに到達できるので、まったく意味がないわけではないのだが。
いずれにせよ『STEINS;GATE』をノベルアドベンチャーと考えると不要なギャルゲー部分もあるように思えるのだが、ギャルゲーの文脈を考慮するとこれらも本作になくてはならない要素となる。しかも「ギャルゲーなのに物語がすごい」という部分も評価に含まれているため、切っても切り離せない要素なのだ。実写版ではこれをどう処理するのか見ものである。
3.まゆりは実写版でも美少女なのか?
IGN JAPAN副編集長の今井と『STEINS;GATE』について話したとき、彼は「幼馴染の椎名まゆりは、岡部倫太郎の子供あたりにしたらよかったのではないか」と語っていた。これにはとても納得した。
本作がギャルゲーであることを考えると、椎名まゆりが美少女なのも当然だ。しかし、美少女であるがゆえに困ったところがある。椎名まゆりの物語上の役割は“運命に翻弄される被害者”で、彼女を助けるために岡部倫太郎たちが苦労をすることになる。つまり、椎名まゆりは助けられるべき被害者なのに、魅力的な女性のひとりでもあるのだ。
これが具体的にどう困るのか。いわゆるトゥルーエンドで椎名まゆりは岡部倫太郎に好意をあまり持たない(正確にはそれを見せない)のだが、彼女の個別エンドになるとふつうに好意を持つようになる。つまり、同じ人物なのにちょっと話の展開が変わっただけで心境が大きく変化したように見えるのだ。
椎名まゆりは「助けるべき被害者」なのに、ルートによっては「魅力的な美少女のひとり」に役割が変わってしまう。両立すればベターなのだが、それはありえない作りになっている。立場がコロコロ変わるとどう捉えるべきかわからないし、ともすれば物語の矛盾にすら見えてしまう。よって、「恋と縁遠い子供」のほうが話のうえでは収まりがいいわけだ。これをどう変えるのか、あるいは変えないのかも見どころのひとつだろう。
なお、今井の“妄想”も詳しく記しておこう。主人公の岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖は中年の研究者に変更、そして椎名まゆりは主人公の子供にする。岡部倫太郎が自分の子供を救うために行動をするうえで、牧瀬紅莉栖と恋に落ちる流れならばよりストーリーがうまく行くという話だ。さらに強烈なフックを作るのであれば、岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖を同性にし、同性カップルが成立するのもアリだという。この妄想、なかなか優れているのではないだろうか。ギャルゲーとしては問題かもしれないが。
4.ゲームおよびギャルゲー的な要素をどうするのか?
『STEINS;GATE』で真エンドを目指す場合、メインヒロインである牧瀬紅莉栖に対する強い思いが重要になる。思いを持てば持つほどプレイヤーはいろいろな要素を試行錯誤し、アドベンチャーゲームを手探りで攻略するような形で、トゥルーエンドに到達できるのだ。
そして、岡部倫太郎が牧瀬紅莉栖に強い思いを持つということが、ストーリーとしてもトゥルーエンドにたどり着く条件になっている。つまり、プレイヤーと岡部倫太郎が「牧瀬紅莉栖を強く思う」という点において一体化する仕掛けが用意されているのだ。
このプレイヤーと主人公のリンクが『STEINS;GATE』において非常に重要だ。おかげでプレイヤーはどっぷりと感情移入でき、エンディングで泣けるのである。だが、見るだけの映像作品ではこれがうまく機能しないのは明白だろう。
能動的に攻略することによってプレイヤーと主人公をリンクさせる、ゲームおよびギャルゲー的な要素はどう解釈するのか。アニメ版『STEINS;GATE』では、『STEINS;GATE 0』に繋がる特別版を放送するという特殊な仕掛けを用いていた。ファンであればあるほど実写版にも特別な何かを求めるはずだ。
『STEINS;GATE』はハリウッド実写化でさらに飛躍するか
『STEINS;GATE』は秋葉原が舞台でネットスラングを使いまくるオタクが主人公だ。そのせいで私はかつて本作を敬遠していた(私もオタクと言われるかもしれないが、また性質の違うタイプなのである)。それから9年近く経過してこのゲームをはじめてプレイした。そのときはゲームの質が変化してしまったことを痛感したものの、それでも物語のよさを感じられたのだ。
『STEINS;GATE』が優れた実写作品になれば、さらに多くの人に本作の良さが伝わるのは間違いないだろう。ハリウッド実写化には不安もつきまとうが、向いているこの作品ならば成功できる可能性は十分にあるはずだ。
ただ、これまで書いたように課題はいくつも積み上がっている。それをいかに解決するのか、あるいは解決できないのか。そこを含めて楽しみだ。エル・プサイ・コングルゥ。
渡邉卓也(@SSSSSDM)はフリーランスのゲームライター。友人が阿万音鈴羽のジャージを着ている姿を先に見たため、あとで『STEINS;GATE』を遊んだとき「このキャラあいつと同じ服着てる!」と衝撃を受けた(因果関係が逆)。
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February 02, 2020 at 07:00AM
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『STEINS;GATE』はハリウッド実写化でさらなる名作になるのではないか ── 本作にある4つの課題を乗り越えられれば - IGN JAPAN
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