ハリウッド大作シリーズ続編やリブートが軒並み不振に終わった今年の米興行シーン。一方、Netflixをはじめとする配信大手は、大作の独占配信やオリジナルコンテンツ獲得で、映画界における存在感を拡大している。今年のハリウッド・メジャースタジオと配信プレイヤーたちの動きから、来年は映画興行の構造に大きな地殻変動が起きることが予想される。さらに、映画館の存在意義が問われていくだろう。ハリウッドから、現地関係者やメディアの声を交えてお伝えする。
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■今年の映画シーンを象徴するハリウッド大作続編、リブートの相次ぐ不振
米ホリデーシーズンの興行収穫期である11月は、リブート版の不振が相次いだ。1日に全米4086館で大規模公開された『ターミネーター:ニューフェイト』は、公開初週末の興収が2900万ドル。その後も伸び悩み、6188万ドルに着地。製作費は1億8500万ドルといわれ、数ヶ月前から大々的な宣伝が行われていたが、不振とされた前作『ターミネーター:新機動/ジェネシス』(8976万ドル)にも満たない結果となった。8日には、名作『シャイニング』の約40年ぶりとなる続編『ドクター・スリープ』が公開され、初週末の興収が1411万ドル、現状3127万ドルと苦戦。さらに、13日に公開された、16年ぶりのリブート版『チャーリーズ・エンジェル』は、初週末興収がわずか835万ドル、1カ月後の時点で1756万ドルと厳しい状況だ。
近年の米国では、「興収を稼げるのは、ディズニー映画かフランチャイズ作品のみ」という説が囁かれてきたが、ここへきて、「リブート作品の賞味期限を、どう見極めるか?」という議論が重要視されている。上記3作品に共通する不振の理由として、米映画メディアのハリウッド・リポーターは、35歳以上の観客獲得ができず、とくにオリジナル版になじみのある45歳以上が劇場に足を運んでいないと報じている。さらにどの作品も、新世代へのアピールにも欠けたようだ。『チャーリーズ・エンジェル』は、若い女性を惹きつけるスターパワー不足が痛手に。『ドクター・スリープ』については、『ゲット・アウト』『IT/イット』『クワイエット・プレイス』など、オリジナルホラーが若者の興収を稼げる時代にあって、逆に「40年前の名作のリブート」という売り文句が新鮮味を奪ったという声もある。『ターミネーター:新機動/ジェネシス』においても、熟年の素材や登場キャラに若者が反応しなかった。
来年は34年ぶりの『トップガン』続編、21年から27年にかけては『アバター』の続編4作の順次公開が控えている。『ジュラシック・パーク』や『スター・ウォーズ』など、リブートがいまだ観客を動員できるフランチャイズもあることは確かだが、大切なのは、賞味期限の見極め方なのか、それとも調理の仕方なのか。リブート作品をめぐる議論は続きそうだ。
■巨匠やスターが相次いで配信オリジナル映画へ 配信がメジャースタジオを凌駕する状況
リブート大作の不振で映画興行が苦しむなか、配信業界はオリジナル映画で存在感を増している。Netflixでは、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ共演の3時間半の超大作『アイリッシュマン』を11月27日に世界配信。最初の5日間で1320万アカウント(ニールセン調査)、7日間で2640万アカウント(Netflix発表)が視聴、1ヶ月以内には4000万アカウントが視聴すると予想している。1アカウントで家族や友人同士が見ている場合、観客数はさらに増えることになる。
さらにNetflixは、スカーレット・ヨハンソン&アダム・ドライバー主演のドラマ『マリッジ・ストーリー』、アンソニー・ホプキンス&ジョナサン・プライス主演のコメディ・ドラマ『2人のローマ教皇』といった話題のオリジナル映画を連発。同3作品とも、昨年の『ROMA/ローマ』同様、アカデミー賞につながる賞レースの有力作品でもあり、先日発表されたゴールデングローブ賞では、作品賞(ドラマ部門)に3本ともノミネートされた。作品によっては、観客数のみならず、評価の面でも、配信プレイヤーがメジャースタジオを凌駕する状況になっている。
■メジャースタジオが自社配信サービスを開始 コンテンツの囲い込みが始まる
こうしたなか、メジャースタジオ各社は、それぞれのメディアグループで動画配信サービスへの動きを強めている。今年11月にはディズニーが「Disney+」をローンチ。配信オリジナルコンテンツとして、『スター・ウォーズ』シリーズ初の実写版スピンオフ『ザ・マンダロリアン』をお披露目した。来年春には、ワーナーメディアが「HBO Max」、NBCユニバーサルが「Peacock」、ジェフリー・カッツェンバーグが短編に特化した「Quibi」をローンチ予定。映画ビジネスの3本柱とされる製作・配給・興行のうち、製作・配給面で、配信重視への流れが強まっている。
製作面では、新たな配信サービスをローンチする各スタジオが、NetflixやAmazonなど既存の配信大手に続き、人気フィルムメイカーやショーランナー、コンテンツの囲い込みを行っている。配給面においても、メジャースタジオが映画を劇場限定または先行公開したのちに、自社サービスで独占配信したり、さらには、配信オリジナル映画の製作に乗り出す可能性がある。では、映画ビジネスの3本目の柱となる興行(=映画館ビジネス)は、どこへ向かうのか?
■映画館の生き残りのカギは『アバター』4部作か その結果によっては衰退も?
「今後、映画は、そして映画館はどうなるのか?」とは、今年のハリウッドでもっとも交わされた問いと言えるだろう。ただし、確実な答えはない。米メディアやスタジオ・エグゼクティブ、フィルムメイカー、興行主と、さまざまな立場の映画関係者の声を集めれば集めるほど、意見も予測も想いもさまざまだ。6月に米「ニューヨーク・タイムズ」紙が「10年後まで、映画が生き残る方法は?」と題した総合インタビュー記事を掲載したが、そこで披露された各立場からの意見が、そのカオスを象徴している。
プロデューサーのジェイソン・ブラム氏(『ゲット・アウト』『セッション』)は、「ハリウッドにいて、この1年ほど緊張感を感じたことはない。未来を予測することはできないが、信じられないほどドラマチックな変化が訪れるはずだ」と断言。ソニー・ピクチャーズの元チェアマンのエイミー・パスカル氏は「『誰も観に行かないのだから、映画館で(作品を)上映するのはやめましょう』という自己暗示はかけたくない。口に出したら、暗示にかかってしまうから」と意味深な答えを残している。売れっ子クリエイターのJ・J・エイブラムス監督(『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』監督)は、「イベント映画といわれる超大作以外に、人々を劇場に動員する方法を見つけなければならない」と、映画館が生き残るためには、クリエイティブ面、ビジネス面での工夫が必要であることを指摘する。
配信パワーを熟知しながらも、“映画館で観る映画”への愛を語るのは、俳優のクメイル・ナンジアニ(『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』)。「『ゴーストバスターズ』や『グレムリン』『インディアナ・ジョーンズ』を(映画館で)観て育った。もし、YouTubeだけを観て育っていたら、映画好きになったかわからない」。実体験から映画館の必要性を語るのは、昨年の劇場ヒット作『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ監督。「去年、たくさんの人々が劇場に駆け付ける姿を見て、友だちや家族、他人と映画を共有するという社交的体験が、いまだ根強い力を持っているのだと再認識した」。
ある劇場主は、「映画館に行く人が減ったというけれど、野球場だって満席のときとそうでないときがある。映画興行に波があるのは、今に始まったことではない」とコメント。ディズニーの消費者・国際部門代表のケビン・マイヤー氏は、「配信ビジネスにおいても、皆が成功するわけではない。来春、すべての主要配信サービスが出そろったところで、結果が見えてくるはずだ。2~3年ほどの間に、3~6つのサービスに淘汰されるだろう」と配信ビジネスに冷静な目を向けている。
誰もが変化を確信しつつも、その先の未来については、さまざまな予測が渦巻くハリウッド。映画館の行方を語るうえで、カギとなるプロジェクトのひとつがジェームズ・キャメロン監督の『アバター』4部作だろう。「何でもマルチタスクの時代にあり、映画館では皆、その他のすべてのことを手放して、スクリーンに没頭する。その体験をしてこそ、映画だ」という持論で知られ、これまで監督作は『アバター』や『ターミネーター』、『タイタニック』など負け知らずで実績を積み上げてきた。そんなキャメロンだが、原案、製作、製作総指揮を務めた最新作『ターミネーター:ニューフェイト』は苦戦を強いられてもいる。
映画館の存在意義が問われているいま、映画シーンの歴史において常勝を誇ってきたキャメロンが満を持して手がける『アバター』4部作の行方に大きな注目が集まっている。映画館に新たな風を吹かせるのか?観客はどのように反応するのか?どちらにしても、映画興行の構造変革という意味で、今が映画史に残る岐路であることはまちがいない。
(構成:編集部・武井保之/執筆:町田雪)
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