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【特別寄稿】ハリウッドvsトランプ 死闘の結末(前田有一/映画評論家) - ニフティニュース

いまだトランプ氏が敗北を認めない米大統領選。支持者たちは声高に不正を叫ぶが、確たる証拠は見つからず、バイデン氏の勝利は揺るぎそうにない。戦いは終わったと見るべきだろう。

 思えばこの4年間は、トランプ大統領と、彼の排外主義を許さぬハリウッド映画人との戦いでもあった。ハリウッドがあからさまに大統領批判を繰り広げたのはブッシュ政権以来だが、それ以上に激しい戦いだった。

 当時、ブッシュ大統領が嫌われたのは、イラクなど戦争政策に対する批判が主な理由だった。だから反ブッシュのメインプレーヤーとなったのは、熱烈な民主党支持者で知られる女優のスーザン・サランドンや、再選阻止を目的にした映画「華氏911」(2004年)のマイケル・ムーア監督などリベラル映画人が中心だった。

 ところがトランプ氏に対しては、映画業界はほとんど一丸となって激しく抵抗した。ジョディ・フォスターのように、これまであまり政治的な活動が目立たなかったセレブが人前に立ち、反トランプを訴えた。

 なぜそこまでトランプ氏が嫌われたのかというと、彼が移民排斥をはじめとする「排外主義」をむき出しにして大統領になろうとしたからだ。やがてトランプ氏は不法移民のみならず、労働資格を与えるなどしてオバマ前大統領が救済した「幼いころ親に連れられ入国した不法移民の子供たち」をも締め出そうとした。

 こうした考え方は、世界中から才能を集めて繁栄する「移民ドリームチーム」のハリウッドの住人には受け入れがたい。彼らのアイデンティティーにかかわる問題だから、保守もリベラルも関係なかった。

 実際、彼らはトランプ氏が有力候補となった16年ごろから、暗にトランプイズムを批判する映画を量産し始める。とくに彼の象徴となった発言、15年6月16日の大統領選出馬宣言での「メキシコ国境との間に、(不法移民を防ぐための)万里の長城を築く」に呼応するような、「壁」が象徴的に登場する作品を増やしていく。

「壁」と「黒人」を描いた「ブラックパンサー」

 その最たるものが「ブラックパンサー」(18年)で、これはマーベルのアメコミ映画であると同時に黒人映画でもある。この映画の主人公ブラックパンサーは、なんと見えないバリアー=「壁」で囲んで、外部の世界から自国を守ってきた「国王」。ところが彼は、最終的にその壁を自ら取り払い、孤立主義を捨てる選択をする。米国のマイノリティーである「黒人」が「壁」を壊すこの映画は、この年の全世界のあらゆる映画の中で最大の興行収入を記録した。

 誰もが認める世界最強の発信力と影響力を持つハリウッド映画の、まさに面目躍如といったところだが、こうした「和解と多様性を尊重」する価値観の作品を広めることで、彼らは業界をあげてトランプ政権の「分断統治」に抵抗してきた。

 だが、ブッシュ時代と違ったのは、大統領側の発信力が格段に大きくなっていた点だった。トランプ氏は自分に都合の悪いメディアを「フェイクニュース」扱いして相手にせず、ツイッターで直接国民に語りかける戦略をとった。そのツイートには狂信的というべき支持者がぶら下がり、猛烈な拡散力を発揮。結果的に、新聞やテレビに勝るとも劣らない強大な発信力を「個人で」持つことになった。

■デ・ニーロは「あの脱税野郎、顔面を殴りたい」

 そんなトランプ氏に対し、セレブたちも真っ向から攻撃した。ジョニー・デップは「まるでワガママな子供だ」と皮肉り、リチャード・ギアは「彼は扇動者だ」と批判。ロバート・デ・ニーロに至っては「あの脱税野郎、顔面を殴りたい」とまで言った。

 一方のトランプ大統領も、自身の物まねをしたメリル・ストリープに「三流女優」と言い返すなど、権力者でありながら個人攻撃を繰り返した。

 このように、ハリウッドとトランプ氏の激突というのは、いわば世界最大の発信力を持つ横綱同士のガチンコ勝負、熾烈な頂上対決だった。

 結果的に、作品でも、作品の外でも連帯し、勝利を収めたのはハリウッドだったが、果たしてバイデン時代にはどうなるのか。

 少なくともバイデン氏は、トランプ大統領のようなマッドマンセオリーはとらないだろうから、セレブたちの直接的な政権批判も当面は影をひそめよう。排外・孤立主義を緩める政策をとれば、映画界も政治的な暗喩をこめない、昔のような純粋なエンタメ映画を作るようになるかもしれない。

 いずれにしても、ヘイトやデマにまみれた、分断と対立の時代が終わる契機となってもらいたいものだ。

(前田有一/映画評論家)

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November 23, 2020 at 07:26AM
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