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裕一と池田が作り上げた『鐘のなる丘』 『エール』戦後の日常に差す希望 - リアルサウンド

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 曲を書くことができなくなった裕一(窪田正孝)のもとに、何度も断っても連日演出家の池田二郎(北村有起哉)がやってくる。朝ドラ『エール』(NHK総合)第93話では、戦争によってその後も様々な苦悩を強いられていた登場人物たちに少しの光が垣間見えていった。

 裕一の曲は人を勇気づけることができると、池田は裕一の作る曲を制作予定のラジオドラマに使うことにこだわっていた。池田の懇願と作られた歌詞を見ることで、少し曲が降りてきたと告げる裕一は、曲を書く決意をすることに。しかし、若者たちを戦争へ掻き立ててしまう曲を書いてきたことを一身に自分の責任として抱えてしまう裕一は、曲を書こうとするたびに、過去の記憶がフラッシュバックして苦戦する。

 自らで責任の全てを背負わなくてもよいはずで、むしろ戦争は全員が国家の被害者とも言うべきなのに、心優しい裕一であるからこそ簡単に折り合いをつけられないのが伝わってくる。

 一方で、職が見つからずに苦悩を強いられていた智彦(奥野瑛太)は、闇市でラーメン屋を営む天野弘(山中崇)と出会い、ラーメン屋としての修行を積むことになった。軍人であったときのプライドをなかなか捨てることができずにいた智彦。天野に軍服は邪魔だから脱げと言われる。

 このように戦争は、最中にたくさんの人の心を壊したり命を奪うだけでなく、終わった後も多くの人を色んな形で苦しめていたことがわかる。今まで讃えられていた軍人が心ない言葉を浴びせられたり、職がなくなったりして路頭に迷い、戦災孤児たちも何とか毎日を生きている。

 裕一も誰かの支えとなる曲を書いていたつもりが、戦争に加担し、その後押しをしていたことに苦悩を強いられている。それでも何とか池田から頼まれていた曲を書き上げて、音(二階堂ふみ)は心の底から裕一が曲を書き上げられたことを喜んだ。完成したラジオドラマ『鐘のなる丘』は、裕一の楽曲とともに、多くの人の背中を押し、勇気づけることになる。聴取者から回数を増やして欲しいという声も殺到し、放送回も徐々に増えて週2日から週5日に増え、現在の朝ドラのもとにまでなったという。

 少しずつではあるが、それぞれの日常に光が見えてきており、次の時代の一歩を歩みつつある。

■岡田拓朗
関西大学卒。大手・ベンチャーの人材系企業を経てフリーランスとして独立。SNSを中心に映画・ドラマのレビューを執筆。エンタメ系ライターとしても活動中。TwitterInstagram

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
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