“音の世界”で活躍する女性たち
ハリウッドの大物プロデューサーとして知られるハーヴェイ・ワインステインが何十年にもわたって女性たちに性的虐待を重ねてきたことが明らかにされたのは、2017年10月のこと。以来、セクシャルハラスメントや性的暴行の被害体験をSNSなどで告白する#MeToo運動は、国際的に大きな広がりを見せています。 商業的な娯楽作品の場合ですが、映画というものは、たったひとりでもひとまず作品を完成させることが可能な小説や漫画に比べると制作に必要なお金と人員の数が桁違いです。性的な搾取が発生する現場において、常に被害者が女性で加害者が男性であるとは限りませんが、映画会社の重役や有力な出資者の多数を男性が占めている現状では、とりわけ女性が弱い立場に追いやられがちだというのは想像に難くありません。そういえばメジャーな映画賞を見ていても、主要部門で挙がる名前には極端に女性が少ないように感じてしまいます。たとえば92年におよぶアカデミー賞の歴史で監督賞にノミネートされた女性監督は、これまでわずか5名だけなのだそう。受賞したのは2009年のキャサリン・ビグローひとり。映画館の客席に座っている人たちは、そこまで男女比が偏っているとは到底思えないのに。 そんなわけでハリウッドの性差別は思っていた以上に根深いということをどうしても意識せざるを得ない今日この頃ですから、現在劇場公開中のドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』(2019年)の監督が女性だというのは、ちょっと嬉しい驚きでした。タイトルの通り映画において音がいかに重要な役割を担っているかに着目した、たいへん楽しく勉強になる作品です。はじめは無音の映像のみだった映画というものに音が付き、徐々に進化して現在のデジタル技術を活用した立体的な音響システムに至るまでの歴史が、豊富な事例と共に紹介されます。声、音響効果、音楽など、映画を彩るさまざまな音の構成要素をひとつずつ取り上げ、それらがどのように作られているのかを超一流の職人たちが解説してくれるのだから贅沢です。 本作の監督ミッジ・コスティンは、90年代初頭より音響デザイナー・音響編集者としてハリウッドで活躍した後、南カリフォルニア大学(USC)映画芸術学部で教鞭を執ってきた人物。初の長編監督作だというこの作品で、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、デヴィッド・リンチといった映画業界の最重要人物たちが取材に協力しているのも、これまでに積み重ねた実績があってこそなのでしょう。ライアン・クーグラー監督(『ブラックパンサー』)も教え子のひとりなのだそうです。
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September 10, 2020 at 06:22PM
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ハリウッド映画を支えてきた裏方の女性たち:ミッジ・コスティン監督『ようこそ映画音響の世界へ』(GQ JAPAN) - yahoo.co.jp
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